位　置






廣　袤

地　勢


地　質


気　候















戸　数
人　口

職　業














交　通

本町は西成郡北部地域の西南に位し、新淀川の南北両岸に跨り、其の南
部に在るは、海老江、浦江、大仁の三部落にして、北部にあるは、塚本
及び海老江新家なり、而して東は西成郡中津町、大阪市北区北野佐藤町、
西梅田町、上福島北一、二、三、四丁目に接し、西は西成郡伝法町、稗
島町、歌島村、大阪市北区西野田上島町に、南は大阪市北区上福島中四、
五丁目、西野田亀甲北之町、中江町、茶園町、大開町に、北は西成郡中
津町、神津町、歌島村、稗島村に境し、就中大阪市街に接続する部分は、
其の境界犬牙錯綜の地域尠からず。廣袤東西三十五町、南北二十一町、
面積〇.一九方里、地形は淀川の南岸に在るものは西南より東西に長く、
北岸に在るものは略三角形を呈せり。両部何れも地勢平坦にして、耕地
は肥沃なりといふを得ざるも概して耕耘に適せり。

地質は沖積層に属し、概ね砂質壤土にして、下層に至るに従ひ青黒色を
呈し、砂礫の密度濃厚なるが如し。

気候は大正三年より十二年に至る十ヵ年平均温度に拠るに、最高十七度
九、最低十四度、最高気温の極度は、凡そ三十七度六に達し、最低の極
度は、凡そ零下二度一分に降れり。又昼夜寒暖の差は平均九度にして、
最暖の月と最寒の月との差は平均三十九度五なり。降雨量一ヵ年平均千、
二百八十八粍にして、最多は凡そ千六百五十九粍に達し、最小は凡そ八
百七十一粍二なりき。又年中にて降水量の最多なるは六月にして、二百
三十五粍三、最小は二月にして三十六粍八、降水日数年平均凡そ百八日、
其の中最多の年は百二十一日、最小の年は九十三日なりき。風は北東風
最も多く、西風之に亜げども、風力は西風最も強かりき。降霜初日の平
均は十一月九日、最早の年は十月廿九日、最遅の年は十二月卅一日、降
霜終日の平均は四月九日にして、最早の年は二月二十四日、最遅の年は
四月二十日、降雪初日の平均は十二月二十一日にして、最早の年は十二
月五日、最遅の年は一月廿八日、終日の平均は三月十四日、最早の年は
二月三日、最遅の年は三月十五日、而して霜の期間は平均百五十三日、
雪の期間は平均八十四日に亘り、寒暑並に中庸を得たりと謂つべし。

大正十二年末現在の本町戸数は一万二千五百九十戸、人口五万一千八百
七十六人、田八十五町一反、畑八町歩弱、宅地百二十四町、池沼十五町
三反、其の他雑地十一町余、計二百四十三町五反余を包括し、其の住民
の職業別は、農業七十六戸、三百四十八人、飼畜業百十二戸、二百二十
八人、工業三百九十三戸、八千二百二十五人、商業一千八百八十六戸、
三千五百四十二人、公務及び自由業三千五百四十三戸、三千七百三十三
人、交通業三百四十八戸、四百二十二人、其の他四千八百五十一戸、九
千三人。今や南岸地域は地上殆ど空隙を存せず、就中浦江方面の人口密
度は一平方里三十八万六千余を算する割合にして、殆ど其の発展の極度
に達せり。唯北岸部落は今尚多く農業に従ひ、犂を南畝に樹て、牛を北
郊に牧し、其の余裕綽々たるものあるを見る。大正十一年の統計に因り
各種の生産総額を挙ぐるも、農産物八万四千八百円、畜産物拾三万七千
円、工産物参千三百二十九万五千六百円、合計三千三百五拾一万七千四
百余円。而して其の工産額は本府総額の二十八分の一弱を有し、本郡工
産額の四分の一弱の多きを占めたれば、府下屈指の工業地たるを知られ
しに、爾後一段の発展を遂げし今日に在りては、其の産額の旧観に止ら
ざるは、自ら明なれば復之を統計に須つの要あらざるべし。

交通の現状にありては、大阪市と聯絡する大仁新道、阪神北大阪線、或
は阪神国道の如き其の最も著大のものにして、其の他の町道を合して一
百七十有余線を有す。更に水運に由るものに、新淀川及び之に並行せる
長柄運河ありて、近時貨物の運漕頗る頻繁を極む。淀川改修以前にあり
ては、吾が郷土の西北部を囲繞せる中津川あり、其の洋々たる清流は沿
岸住民の炊爨に供せられしも、淀川改修の結果河水利用の便を失ふと同
時に、一百拾四町壱反弐畝拾八歩の地積は川敷と変するの止むなきに至
れり。いでや以下吾が郷土の沿革を叙し以て現代に及ばんとす。